外国人を採用する前に知っておきたい助成金の仕組み

最終更新日:2020年12月24日 執筆日:2020年01月14日

近年の深刻な人手不足により、政府は外国人人材を受け入れるための制度設立や体制変更を積極的に行っています。
それに伴い、外国人を雇用する企業も増加しています。

外国人人材を雇用する企業が受け取れる助成金は様々な種類があり、それらをうまく活用すれば、雇用の管理改善や従業員のスキルアップをはかることが可能になります。

今回は助成金の種類や目的、助成対象者、申請の際の注意点などをご紹介していきます。

外国人の雇用時に受けられる助成金について

助成金制度は「雇用の安定」「職場環境の改善」「仕事と家庭の両立支援」「従業員の能力向上」などを目的として設けられています。
それぞれの助成金の要件を満たしていれば必ず交付されるため、申請の難易度は比較的低くなっています。
また、ほとんどの助成金は、もちろん日本人も対象になっているので外国人以外の従業員にも活用することが可能です。

ここでは、助成金の中でも外国人を雇用した際に活用が可能な助成金の一部をご紹介します。

■ 雇用調整助成金(中小企業緊急雇用安定助成金を含む)

目的
景気の変動、産業構造の変化など、経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた場合に休業・教育訓練・出向によって従業員の雇用の維持を図る事業主に対して助成し、従業員の失業の予防や雇用の安定を図る
支給額
(1)休業の場合
支給対象者に支払われた休業手当相当額に、助成率(中小企業は2/3 中小企業以外は1/2)を乗じて得た額(上限額8,335円(1人1日 2020年8月現在))
(2)教育訓練の場合
支給対象者に支払われた賃金相当額に助成率(中小企業は2/3 中小企業以外は1/2)を乗じて得た額にさらに1人1日あたり1,200円を加えた金額(上限額8,335円(1人1日 2020年8月現在)※加算額1,200円は含みません)
(3)出向の場合
出向元事業主の負担額(出向前の通常賃金の1/2の額が上限)に助成率(中小企業は2/3 中小企業以外は1/2)を乗じて得た額
対象者
・売上高または生産量などの事業活動を示す指標の最近3か月間の月平均値が、前年同期に比べ減少していること
・雇用保険被保険者数および受け入れている派遣労働者数の最近3か月間の月平均値が、前年同期と比べ、規定人数以上増加していないこと
・過去に雇用調整助成金の支給を受けたことがある事業主が新たに対象期間を設定する場合、直前の対 象期間の満了の日の翌日から起算して一年を超えていること

出展:厚生労働省『雇用調整助成金(中小企業緊急雇用安定助成金を含む)について』

■ キャリアアップ助成金(正社員コース)

目的
有期契約労働者等の正規雇用労働者等への転換、または派遣労働者を直接雇用した事業主に対して助成するもので、有期契約労働者等より安定度の高い雇用形態への転換等を通じたキャリアアップを図る
支給額
有期雇用→正規雇用(1人あたり)57万円(42万7,500円)
有期雇用→無期雇用・無期雇用→正規雇用(1人あたり)28万5,000円(21万3,750円)
※()内は中小企業以外の額
対象者
(一部抜粋)
・雇用されている期間が6ヶ月以上3年以内の有期雇用労働者
・雇用されている期間が6ヶ月以上の無期雇用労働者
・6ヶ月以上同一の事業所で業務に従事している有期・無期派遣労働者
・支給対象事業主が実施した有期実習型訓練(人材開発支援助成金(特別育成訓練コース)によるものに限る)を受講し、修了した有期雇用労働者等
※1年度1事業所あたりの支給申請上限人数は20人

出展:厚生労働省『キャリアップ助成金』

■ 人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)

目的
外国人労働者は、日本の労働法制や雇用慣行などの知識の不足や、言語の違いなどから労働条件・解雇などに関するトラブルが生じやすい傾向にあるため、外国人特有の事情に配慮した就労環境の整備を行い、外国人労働者の職場定着に取り組む事業主に対して、その経費の一部を助成すること
支給額
外国人を雇用する事業主が外国人労働者に対する就労環境整備措置を実施した場合に支給対象経費の合計額に助成率を乗じた額
・生産性要件を満たす場合: 支給対象経費の2/3(上限額72万円)
・生産性要件を満たしていない場合: 支給対象経費の1/2(上限額57万円)
対象者
・外国人労働者を雇用する事業主であること
・外国人労働者に対する就労環境整備措置((1)及び(2)の措置に加え、(3)~(5)のいずれかを選択)を新たに導入し、外国人労働者全員に対して実施すること
(1)雇用労務責任者の選任
(2)就業規則等の社内規程の多言語化
(3)苦情・相談体制の整備
(4)一時帰国のための休暇制度
(5)社内マニュアル・標識類等の多言語化
・就労環境整備計画期間終了後の一定期間経過後における外国人労働者の離職率が10%以下であること

出展:厚生労働省『人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)』

■ トライアル雇用助成金

目的
職業経験や技能、知識等のスキル不足から安定的な就職が困難な求職者について、ハローワークや職業紹介事業所等の紹介により、一定期間試行雇用した場合に助成するものであり、それらの求職者の適性や業務遂行の可能性を見極め求職者及び求人者の相互理解を促進すること等を通じて、その早期就職の実現や雇用機会の創出を図る
支給額
1人につき月額4万円(※対象者が母子家庭の母又は父子家庭の父の場合、1人につき月額5万円)
※トライアル雇用期間中に常用雇用に移行した場合や、トライアル雇用期間中に対象者が離職した場合などは金額が変動します。
対象者
(一部抜粋)
【求職者】
・紹介日前2年以内に2回以上離職又は転職を繰り返している者
・紹介日前において離職している期間が1年を超えている者
【事業者】
・ハローワーク・紹介事業者等に提出された求人に対して、ハローワーク・紹介事業者等の紹介により雇い入れること
・原則3ヶ月のトライアル雇用をすること

出展:厚生労働省『トライアル雇用助成金』

■ 人材開発支援助成金

目的
雇用する労働者のキャリア形成を効果的に促進するため、職務に関連した専門的な知識および技能を修得させるための職業訓練等を受講させる事業主に対して助成する制度
支給額
現在、助成メニューは7類型あり、それぞれによって金額は異なるため、確認が必要です。
・特定訓練コース
・一般訓練コース
・教育訓練休暇付与コース
・特別育成訓練コース
・建設労働者認定訓練コース
・建設労働者技能実習コース
・障害者職業能力開発コース
対象者
対象になる要件に関しては、コースによって異なるので、厚生労働省『人材開発支援助成金』からご確認ください。

助成金と補助金の違い

助成金と同じように補助金と言う言葉も耳にすることがあると思います。
どちらの制度も受給された資金は原則、返済不要などの共通点はいくつかありますが、管轄機関や制度の目的、申請要件などに違いがあります。

主に厚生労働省が管轄する助成金制度は、雇用の安定や人材育成などが目的であることに対し、経済産業省や地方自治体が管轄する補助金制度は「公益性があると認められた事業の促進」が主な目的とされています。
また、助成金は要件を満たしていれば必ず交付されますが、補助金は決められた期間内に厳しい審査を通過しなくてはいけないため、助成金に比べ受給のハードルが高くなっています。
ですが、補助金は種類が豊富で支給額が大きいことなどから、申請する事業者は多く、審査合格倍率も高くなることが多いようです。助成金と違い、補助金は予算が決まっているため、人気があるものは申請期限前であっても、上限件数に達した時点で受け付けが締め切られてしまうこともあります。
補正予算が組まれた場合には補助金の二次公募が行われることもあるので、経済産業省のHPなどで常に新しい情報を確認しておくことをおすすめします。
経済産業省HP

助成金を活用する際の注意点

助成金は補助金の申請に比べて、交付のハードルは低いとは言え、要件をクリアすることはもちろん、必要書類の不備がないよう準備をしなくてはいけません。
要件をクリアし、助成金の交付を受けた後であっても、助成金の対象期間に支給対象者が休業や離職をした場合は、助成金の申請の調整や取り消しをしなければならないため注意が必要です。

また、外国人を雇用する際に特に気を付けなければならないのが、不法就労です。
例えば、雇用した外国人が保有する在留資格以外の活動をした場合や、在留期限が切れているにも関わらず働き続けていた、雇用されている企業以外でも不法に働いていた、などです。

不法就労が発覚した場合、もし雇用主が不法就労の事実を認知していなかったとしても、企業側も罪に問われます。
そのようなトラブルを防ぐためにも、外国人の入社時には就労ビザやパスポート、在留期限のチェック等は確実に行い、在籍中も定期的に確認や指導を行うことをおすすめします。

外国人を雇用するメリット

前項では助成金を活用する際の注意点についてご説明しましたが、外国人を雇用することで得られるメリットについても少しだけふれていきましょう。

(1)若くて仕事に対して意欲的な人材が豊富
日本で働く外国人の方は勤勉で柔軟性があり、新しい環境に適応する努力を惜しまない方が多く、他の従業員にも良い刺激を与える存在となってくれます。

(2)企業のグローバル化に貢献してもらうことが期待できる
例えば、海外進出を計画している企業が進出予定国出身の外国人を雇用し、その国や地域の慣習・文化・商習慣などをレクチャーしてもらうことで市場の把握や新たな商機を得ることが期待できます。
また、母国語はもちろん、日本語や英語などを習得したマルチリンガルな人材も珍しくなく、ホテルなど、外国人のお客様への接客が必要な観光企業では通訳・翻訳など、言語面で強力な戦力となってくれます。

(3)新たな価値観の創出をもたらしてくれる
日本とは異なる文化・環境で育ってきた背景があるので、日本人では気付かないような問題点の指摘や、全く違う発想やアイデアが創出され、社内の活性化のきっかけにもなるでしょう。

まとめ:助成金を活用して優秀な外国人を採用しよう

外国人の雇用は、在留資格の取得手続きや教育、環境の整備など、コスト面でのデメリットが挙げられることがありますが、いざ入社すれば、仕事に対して真摯で真面目な方が多いのも事実です。
助成金を活用すれば、初期費用を抑えることができ、さらにスキルアップを支援するための助成金を利用すれば、外国人だけでなく日本人社員の能力向上も期待できるため、企業全体の従業員レベルの底上げも可能になるでしょう。

今回ご紹介した助成金以外にも、各自治体が外国人労働者や留学生の雇用促進を目的とした支援事業の取り組みを行っていますので、企業様に合った助成金を活用し、優秀な外国人人材の確保に役立ててはいかがでしょうか。

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